ぶろぐ

Blog
ブロック注射・神経障害

星状神経節ブロックについて

Ⅰ:目的

星状神経節とは、第7頸椎前面にある自律神経節(中継点)で、左右に一対あり、ここから顔面・頸部・上肢・上胸部に自律神経の一つである交感神経が分布しています。交感神経は支配領域の血流・発汗などを主に管理し、身体に何らかの異常が発生した場合には、局所の防御反応として活動が活発になりますが、この現象が逆に異常を悪化させる場合があります。そのような時に、局所麻酔薬により星状神経節の働きを一時的に麻痺させる事で、支配領域の血流を改善し炎所・浮腫・過剰な筋緊張などの異常を軽減する治療法を“星状神経節ブロック”と呼んでいます。

Ⅱ:星状神経ブロックの主な治療対象について

頭頸部^上半身の痛み(筋筋膜性疼痛・神経障害性疼痛)、顔面神経麻痺、耳鳴りやめまい、聴力障害(メニエル・突発性難聴など)、全身性自律神経異常、上肢血行障害(レイノー病など)など多岐にわたります

Ⅲ:治療前準備

・前日又は当日シャワーを済ませて頂きます。

・治療後に安静時間が必要です。トイレを済ませておいて下さい。

・初めて注入される方は、途中で気分が悪くなった場合にすぐ対応できるよう点滴をします。

Ⅳ:治療時について

・ベッドに仰向けに休んでいただきます。

・消毒した後に、星状神経節に向けて針を進め薬液を注入します。

・注射時は声を出したり、顔を動かしたりしないで下さい。咳や唾の飲み込みもお控え下さい。

Ⅴ:治療後について

・注入に使用する薬剤の副作用にて、注射した側の顔から腕にかけて温かくなり、同じ側のまぶたが重たくなる感じや鼻づまり感、眼の充血、のどがかすれた感じが出現することがありますが心配ありません。以上の様な症状は、2時間程度で収まることがほとんどです。

・病室に戻ってからも、3時間はベッド上にて安静にしていただき、注入当日は注入の効果を高めるために、できるだけ安静を心がけましょう。

・注入後、初めてトイレ等へ歩かれる場合は、ナースコールにてお知らせください。

・食事・飲水は看護師がお腹の動きを確認した後に始めてください。(注射の影響で、お腹の動きがにぶくなり、喉の違和感により物が飲み込みにくいことがあります。)

・散歩・入浴などは注入後24時間経過してからとなります。シールやガーゼも24時間後に外して下さい。

Ⅵ:合併症

非常に稀ではありますが、生命に危険を及ぼすような重大な偶発的合併症が報告されています。

  • 後咽頭血腫

・注射針により血管が傷つき、気管周囲にできる血腫(血の塊)

・発生率:4万~10万回に1回 好発時期:注射の2~3時間後に多い

(注射直後から19時間の間に発生の報告例あり)

・初発症状:頭痛・頚部痛・胸痛・呼吸困難・頚部の腫れ・背部痛・喉の違和感・頑固な又は再度の声枯れ

(ブロック後1時間程度で自然に回復する声枯れは10-20%の確率で発生しますが、それとは別です)

・最も怖い症状:血腫による気道閉塞・呼吸困難。致死的に成り得る

・治療:多くは軽症であり自然に吸収されるが、ごく稀に上記の様な呼吸困難に至る場合があるので、その場合は迷わず救急搬送を要請。

  • 感染

皮膚をしっかりと消毒して行いますが、体外から針を刺すことで体内に菌が入ってしまい、感染を起こすことがあります。特にお薬や疾患により免疫機能が低下している方、重度の糖尿病の方ではこの危険性が高くなりますので、よく医師と相談してリスクを理解したうえで、治療をするか決定します。

  • アレルギー

極まれに薬剤に対するアレルギーが生じることがあります。

  • その他

未知・未報告の合併症もあるかもしれません。この場で全てを説明する事は不可能です。

Ⅶ:同意書

患者様が安心して治療を受けていただけるよう同意書を提出して頂き、相互理解をもって治療を行ってまいります。また治療に不安がある方や、中止はいつでもご相談していただいてかまいませんので、その際はご遠慮なくその旨をスタッフまでご連絡下さい。