5.治療(OSSCS)の概略
OSSCSはOrthopaedic Selective Spasticity-control Surgeryの略で「整形外科的選択的痙性コントロール手術」という手術です。「筋解離術」と言われる手術法の中に分類されます。筋解離というのは筋肉を切ったり伸ばしたりして緩めることを意味します。
① 多関節筋の選択的解離、② 目的とする関節周囲での筋解離、③ 関節周囲のバランスを考えた筋解離の3つの基本概念があります。
①は突っ張っていても身体を支える大事な筋肉を出来る限り残して、そうでない筋肉を選んで緩める(切ったり伸ばしたりすること)ことでグラグラにならないよう緊張を緩和することを意味します。
②は同じ筋肉でも緩める部位によりその効果に違いがあるため目的とする関節周囲での筋解離が望まれる、ということです。筋肉は身体の中で宙ぶらりんの状態ではなく、周囲の骨や筋肉などの組織と引っ付いています。そのため筋肉の一方の端でその筋肉を切ったとしてもその筋肉が縮まれば切っていない他方の端にはある程度の力が加わるのです。つまり目的とする関節の近くで処置をしないと思ったほどの効果が得られにくいということになります。
③は表に見える格好だけで判断するのではなく、どの筋肉が異常に突っ張っているのかを判断して、目的とする関節周囲のバランスを考えて筋解離を行うことが大事であるということです。例えば股関節が曲がっているから曲げる筋肉だけを緩めると逆に伸びる方向に突っ張ってしまったりする可能性があるということです。
手術で非常に重要な点があります。
- 皮切(傷)をできるだけ小さくする。
- 出血を抑え、出血を止める際も電気メスの出力をできるだけ落として侵襲(やけど)を軽くする。
- 身体の中の操作を丁寧に行う。
- 手先・足先の手術を行う際も出血を抑える駆血帯(血圧を計る時に使用する腕に巻くもの)を使用せずに行う。
以上のような点に注意して手術は行う必要があり、これが術後の経過、結果、疼痛の程度、入院期間等を左右します。